とんがりの正蔵

2012年8月6日

先日の新聞(新潟日報)の一面コラム「日報抄」に、 落語家八代目林家正蔵(故人)のことが載っていましたので、ご紹介いたします


 「とんがりの正蔵」とあだ名がつくほど、八代目林家正蔵は強い正義感の持ち主だったらしい。
 落語の出演料が思いのほか多いとき、自分が受け取るべきと思う額を超える分は返した・・・

 演劇評論家の矢野誠一さんが、名人たちの生き方をつづった一文で知った。とんがりぶりは徹底していた。仕事用に買った定期券は寄席との往復だけに使い、私用には別に切符を買ったという。

 この潔癖さが国会議員にもあると信じたい。衆参の議員は公務であれば公共交通を無料で使える。両院事務局はその費用として、JRと航空各社に年間13億円を支払っている。しかし、私鉄には支払っていない。

 以前、私鉄71社でつくる日本民営鉄道協会が、国会議員に支給している無料乗車証を廃止するか費用負担するよう両院に求めているという記事があった。「不公平な負担は利用者からも理解されない」は当然の言い分だろう。

 交通費の負担をいま最も感じているのは、原発事故で家族が離散した福島県民に違いない。自主避難者が高速道路の無料化から外れ、湯沢町にいる妻子と月に1度しか会えなくなった会社員のつらさが、本誌夕刊で紹介されていた。

 正蔵は高座の依頼が重なると、安い謝礼しか払えない方に出向いた。「謝礼が高い所には誰かがいく。安い所は自分じゃなきゃ誰も行く人がいない」。

 公共交通の利用は無料なのに、各地の避難住民の実情を見て回る国会議員は何人いるか。「票にならない所は自分じゃなきゃ誰も行く人がいないだろう」???

 そんな言葉をききたい。 


以前にテレビの番組で、正蔵師匠の家にいわゆる突撃リポーターが、突然訪ねた場面を見ましたが、「おまいさんは、誰だね?」、「なんの用事だね?」・・・と、取り付くしまもなく、しまいには「おまいさんは素人じゃないね・・・」とか言われて、番組にならずほうほうのていで、逃げ出していました

リポーター曰く

「ほんとに怖いんですよ、師匠は・・・なにしろ『とんがりの正蔵』ってんですから・・・」


でも、ここまで徹底すると、これも一つの『芸』でしょうか?

よく、古い日本人にあった道徳観などといいますが、古い新しいではなく、私達が当然持っていなければならない倫理観や正義感が薄れ、潔癖さが無くなりつつある現実を突きつけられると、暗澹たる気持ちになります

生活保護費の不正受給や保険診療報酬などの不正請求などが増えていると、ニュースで聞くにつけ、いったい日本人の道徳感はどうなったのでしょうか・・・