臨床例3 バランスチェックの重要性を再確認した例
57歳、女性。主訴:腰痛(腰椎椎間板ヘルニア)、左脚のシビレ、左背部痛、左足首痛、右五十肩(側方挙上不可)、右頸部痛。
25歳のときにヘルニアと診断され、整形外科に通院しながらカイロプラクティック、整体、鍼などさまざまな治療を受けたが良くならず、1年程前からはさらにひどくなった。腰痛のため仕事を休んでおり、夜は肩が痛むので眠れない。
立位検査では、上半身が右に傾いている側弯症があり、左肩甲骨が下方に大きく落ち込み、背中が膨隆している。来院中の患者さんの中ではかなり重症の部類。
バランスチェックの結果、足湯を40℃で15分。膝頭静圧法以外の基本療法のみで10回で完治すると出た。しかし、バランス活性療法の急速な進化にともない、最近では2?3種類の基本療法にさまざまなテクニックを使った施術によって成果を上げていることから、「はたして基本療法だけではどうか」という疑問が。
そこで、同僚(バランス活性療法師)にもバランスチェックを依頼したが、施術回数の差は若干。ほぼ同じチェック内容となる。したがって、バランスチェックの結果通り、無心で基本療法の施術を行うことに。
最初、うつ伏せ姿勢で腰が苦しいとのことだったが、足首回しと踵捻転の時点で消失。施術終了後、上半身のねじれ、傾きがほとんど解消され、全身が軽く大変楽になったと、信じられないような表情で感想を述べられた。7日後に予約を入れて帰宅される。
2回目(7日後)、別人のような明るい表情で来院。前回、施術した夜は腰も楽で肩の痛みもなく、何年かぶりにぐっすり眠ることができた。しかし、3日前ほどから少し痛みが戻った気がするとのこと。施術後、右腕が90度くらいにまで上がるようになった。
3回目以降もすべて同じようにバランスチェックと基本療法で施術を繰り返し、6回目の施術で左脚のシビレ、背部痛、足首痛、剄部痛がほとんど無くなり、左背部の膨隆、側弯も目立たなくなってきた。しかし、腰が時々痛くなり、右腕が90度以上は挙がらないとのこと。
8回目で膝頭静圧法が可能となる。このときには腰痛は完全に消失。肩の改善がいま一歩であったため、バランス活性療法の応用手技や、ほかの療法で採用されているあらゆる手技を使って施術を行ったところ、右腕はほぼ正常に挙げられるようになり、痛みも劇的に消失した。
ところが、翌朝になって患者さんから、「ゆうべは肩が痛んで一睡もできなかった。どうしたんでしょうね」と電話が。その後、バランスチェック通りに基本療法のみで施術を行い、やっと16回目で完治した。
当初、10回で完治するはずだったものが、バランスチェックを無視して、早く治したい一心で施術したことが、むしろ回復を遅らせてしまったものと深く反省している。
この患者さんはその後、2?3ヵ月に1度、メンテナンス的に来院されていますが、1年以上経過しても再発せず、快適な毎日を過ごされています。
バランス活性療法はバランスチェックこそがすべてであり、基本療法をしっかり身につけて施術することにより、初心者であっても「名治療師」になれるものと思います。バランスチェックと基本療法の重要性を再認識した貴重な体験でした。
秋田支部・講師「光陽療術院」
田口 誠(たぐち まこと)